非居住者が海外で口座開設する手順と注意点

最終更新 (日本時間) 執筆 KSKパートナーズ株式会社

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「非居住者」とは何か

銀行口座の開設において「非居住者(Non-Resident)」とは、口座を開設する国に居住していない口座申請者を指します。たとえば、日本に居住しながら香港やマレーシアの銀行口座を開設しようとする場合、申請者はその国の非居住者として扱われます。居住者と非居住者では、銀行が求める本人確認書類の種類や審査の水準が異なるため、事前に確認が必要です。

税務上の「非居住者」(日本の所得税法第2条第1項第3号に基づく区分)とは若干意味が異なります。銀行のCDD(顧客デューデリジェンス)手続きでは、申請者が口座開設地の居住者かどうか、税務上の居住地国はどこかという二点が特に確認されます。特にCRS(共通報告基準)の運用上、税務居住地国と納税者番号の正確な申告は重要な手続きです。

非居住者口座開設の手順

非居住者として海外で法人口座または個人口座を開設する際の基本的な流れは以下のとおりです。銀行によって細部が異なるため、申請前に対象銀行のガイドラインを確認してください。

  • 口座開設を予定する銀行の非居住者向けポリシーを確認する
  • 必要書類を準備し、必要に応じて公証または認証を受ける
  • 口座開設申請書(Account Opening Form)に記入する
  • CRS自己申告書(Self-Certification Form)を提出する
  • 銀行の審査を受け、結果を待つ
  • 口座開設後、初回入金・オンラインバンキング設定などを行う

対面での面談が必要な銀行では、現地への渡航が求められる場合があります。一方で、オンラインまたは代理人申請を受け付けている銀行も存在します。遠隔申請の可否と、代理申請が認められる場合の委任状の形式・公証要件については、銀行に事前確認することが大切です。

必要書類の一覧

非居住者が口座を開設する際に一般的に求められる書類は以下のとおりです。個人口座と法人口座では必要な書類が異なるため、目的に応じて確認してください。

書類の種類 内容・注意点
本人確認書類(パスポート) 有効期間内のもの。顔写真ページのコピーを公証・認証で提出する場合がある
住所証明書類 光熱費請求書・銀行残高証明書等。3か月以内発行のものが多い
納税者番号(日本のマイナンバー等) CRS自己申告書に記入するために必要
口座開設目的書 口座をどのような目的で使用するかの説明
資金の出所に関する書類 給与証明書・確定申告書・投資収益の証明等
推薦状・リファレンスレター(求められる場合) 取引銀行・会計士・弁護士等からの紹介状

高リスク顧客として扱われる要因

非居住者は居住者と比べて、銀行が実地確認を行いにくい立場に置かれます。そのため、非居住者であること自体が銀行のリスク評価において重視される要因の一つとなる場合があります。以下の条件が重なると審査が慎重になる傾向があります。

  • 口座開設国との取引実績が乏しい設立直後の法人
  • 事業所や従業員が口座開設国に存在しない
  • 所有構造が複雑でノミニーを介している
  • 高リスク国として分類される国に関係する取引
  • 資金の出所の説明が不十分

これらのリスク要因に対しては、銀行に対して事業の実態を具体的に示す書類を積極的に提示することが有効です。事業計画書・取引先との契約書・既存の銀行残高証明書などを用意しておくと、審査の進行が円滑になる場合があります。

CRS(共通報告基準)と非居住者口座

CRS(Common Reporting Standard:共通報告基準)は、各国の金融機関が口座保有者の情報を税務当局間で自動交換する仕組みです。非居住者として海外口座を開設した場合、その口座情報は口座保有者の税務居住地国の税務当局に提供されます。日本居住者が香港やマレーシアの銀行に口座を持つ場合、残高・利子・配当などの情報が日本の国税庁に伝わります。香港は2017年から、マレーシアは2018年からCRSに基づく情報の自動交換を実施しています。

口座開設時に銀行が求めるCRS自己申告書(Self-Certification Form)には、税務居住地国と納税者番号(日本の場合はマイナンバーまたは法人番号)を正確に記入する義務があります。虚偽の申告は各国の法令に基づく制裁の対象となるため、申告内容は事実に沿ったものでなければなりません。税務居住地が変わった場合は速やかに銀行へ通知する必要があります。CRS対象の口座情報は、口座残高・利子・配当・キャピタルゲインなど複数の項目にわたって報告されます。

日本側の届出義務

海外で口座を開設した日本居住者には、一定の条件下で届出義務が生じます。毎年12月31日時点で国外財産の合計額が5,000万円を超える場合、翌年6月30日までに国外財産調書を所轄税務署に提出しなければなりません。国外財産には、海外預金残高・海外不動産・海外証券など口座以外の財産も含まれます。また、金融機関を通じた100万円超の海外送金は、金融機関が国外送金等調書として税務当局へ報告します。

さらに、所得2,000万円超かつ財産3億円以上(または財産10億円以上)に該当する場合は財産債務調書の提出も必要です。届出義務の具体的な判断は事業形態や保有資産の状況によって異なります。提出漏れや記載誤りには加算税などのペナルティが科される場合があるため、税理士への相談が不可欠です。

非居住者として口座を活用する際の注意点

非居住者として海外口座を開設する目的と実際の利用目的が一致していることが求められます。口座の使用目的として申告した内容と実際の取引内容が大きく乖離した場合、銀行が取引を停止したり追加の説明を求めたりすることがあります。口座開設時に申告した事業内容や取引の規模を大幅に超えた入出金が繰り返されると、銀行のコンプライアンス部門がリスクフラグを立てるケースもあります。

非居住者口座の開設を試みる前に、開設を希望する銀行が自国(申請者の居住国)の非居住者向けに口座を提供しているかどうかを確認することが先決です。提供していない場合でも、対応している他の銀行を探すことで選択肢が広がります。当社では各国の銀行ポリシーに詳しい現地事業者と連携して、お客様の居住状況と事業内容に合った銀行の選定をご支援しています。

外国子会社合算税制との関係

海外に設立した法人の口座を通じて所得が蓄積される場合、外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)の適用可能性があります。外国関係会社の租税負担割合が20%未満の場合、一定の条件のもとで日本の株主の所得に合算される仕組みです。口座開設地や法人所在地の実効税率が低い国では、この制度の適用可能性を事前に把握しておく必要があります。税制の適用は事業の実態・財務状況・持株比率などによって複合的に判断されるため、国際税務を専門とする税理士への相談が不可欠です。

非居住者として個人口座を開設する場合も、その口座からの収益(利子・配当等)は日本の課税対象となる場合があります。海外口座から得た所得の申告方法については、日本の確定申告の観点から税理士に確認してください。

口座開設後の管理と更新

非居住者として開設した口座も、その後の管理が求められます。銀行は定期的にKYC(Know Your Customer)情報の更新確認を行い、住所・国籍・税務居住地などの情報が最新の状態に保たれているかを確認します。情報に変更が生じた場合は、変更後速やかに銀行へ通知する義務があります。

非居住者の場合は、税務居住地が変化する点に特に注意が必要です。海外移住などにより税務居住地が変わった場合は、銀行に対してCRS自己申告書の更新版を提出する義務が生じます。届け出を怠ると、旧居住地の税務当局に引き続き口座情報が送信される事態になります。

また、長期間にわたって取引がない口座は休眠口座として扱われ、銀行から書類の再提出や面談を求められる場合があります。口座を有効に維持するためには、定期的に取引を行うか、銀行との連絡を継続することが求められます。口座維持に関する具体的な条件は銀行ごとに異なるため、口座開設時にあらかじめ確認しておくことを勧めます。

必要書類を揃えて口座開設申請の準備を始める

当社では非居住者向けの海外口座開設支援を、各国で認可を受けた現地事業者と連携して提供しています。支援の詳細は 海外銀行口座開設の支援 ページをご覧ください。費用については 料金ページ に掲載しています。無料相談は お問い合わせフォーム からお申し込みいただけます。

関連記事:海外法人口座の開設手順と銀行審査の基本 / CRSと海外口座の情報交換 / 海外個人口座の開設と日本の届出義務

出典

  • HKMA「Account Opening – Information Required」(確認日 2026-10-17)https://www.hkma.gov.hk/eng/smart-consumers/account-opening/information-required/
  • BNM「AML/CFT Customer Due Diligence」(確認日 2026-10-17)https://amlcft.bnm.gov.my/customer-due-diligence
  • 国税庁「共通報告基準(CRS)に基づく自動的情報交換」(確認日 2026-10-17)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kokusai/crs/index.htm
  • 国税庁「No.7456 国外財産調書の提出義務」(確認日 2026-10-17)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hotei/7456.htm

この記事は、公的機関が公開している情報をもとに、制度の一般的な内容を説明したものです。個別の税務の判断は税理士が行います。制度は改正されることがあるため、手続きの前に最新の情報をご確認ください。

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