香港の会社秘書役(Company Secretary)の設置義務と業務

最終更新 (日本時間) 執筆 KSKパートナーズ株式会社

香港の会社秘書役(Company Secretary)の設置義務と業務のイメージ写真

香港の会社秘書役とは

会社秘書役(Company Secretary)は、香港の会社法であるCompanies Ordinance(Cap.622)によって設置が義務付けられた役職です。すべての私会社(Private Company)は、会社秘書役を1名置かなければなりません(Section 474)。会社秘書役は法定書類の管理や当局への届出を担い、会社の法令遵守を支える役割を果たします。

会社秘書役は取締役とは独立した存在として機能します。唯一の取締役が会社秘書役を兼務することは、Section 475(2)により禁止されています。取締役が複数いる場合は、その中の1名が兼務することができます。このルールは、会社の法令遵守業務の独立性を確保するために設けられています。

設立直後から法定要件を満たすためには、会社秘書役の選任を早期に完了しておくことが求められます。海外から香港法人を設立する場合、香港に拠点を持つTCSP(信託・会社サービス提供者)ライセンシーを会社秘書役に任命するのが一般的です。TCSPライセンシーは香港の法制度に精通しており、各種法定手続きを代行できます。

会社秘書役の法的要件

会社秘書役には個人と法人のどちらも就任できますが、それぞれに資格要件があります。Companies Ordinance Cap.622は、会社秘書役の資格について以下のとおり定めています。

区分 要件
個人の場合 香港に通常居住(ordinarily reside in Hong Kong)していること
法人の場合 香港に登録事務所または主たる事業所があること

「通常居住」とは、単なる住民登録ではなく、実態として香港に生活の拠点を置いていることを指します。観光ビザや短期滞在では要件を満たしません。外国に居住する個人は会社秘書役に就任できないため、香港居住者またはTCSPライセンシーを選任することになります。

公開登記簿(Companies Registry)には、会社秘書役の通信先住所のみが開示されます。個人の場合、通常の居住地住所は非公開となるため、プライバシーが守られます。法人の会社秘書役については、登録事務所の住所が公開情報となります。

唯一の取締役が会社秘書役を兼務することはSection 475(2)で禁止されているため、1名の取締役で会社を運営する場合は、別途、上記要件を満たす会社秘書役を選任する必要があります。

会社秘書役の主な業務

会社秘書役は、会社の法令遵守と運営管理を支える複数の業務を継続的に担います。主な業務は以下のとおりです。

  • Annual Return(年次申告)の準備と会社登記局(Companies Registry)への提出
  • 取締役会の議事録作成と法定書類の管理・保管
  • 取締役・株主の変更など会社情報の変更届出
  • 登録事務所(Registered Office)の維持と当局からの法定通知の受領
  • 株主総会・取締役会の招集手続きと議事進行の補助
  • 重要支配者登録簿(Significant Controllers Register、SCR)の維持と指定代表としての対応

これらの業務は会社の設立直後から継続的に発生します。会社秘書役が適切に機能することで、会社は香港の法定要件を満たし続けることができます。法定書類の管理・保管は手間のかかる業務であり、専門家に委託することで経営者の負担を軽減できます。

日本から香港法人を運営する場合、時差や言語の壁から法定手続きの漏れが生じやすくなります。TCSPライセンスを持つ現地の専門事業者を会社秘書役として任命することで、法定手続きを確実に進めることができます。取締役変更や株主変更があった際には、会社秘書役を通じて速やかに届出を行う必要があります。

Annual Returnの提出期限と手数料

香港の私会社は毎年、Annual Return(年次申告書)を会社登記局に提出する義務があります。提出期限は設立記念日(Incorporation Anniversary Date)から42日以内です。Annual Returnには、会社の取締役・株主・会社秘書役・登録事務所などの最新情報を記載します。情報の正確性が求められ、虚偽申告は法的な問題につながります。

期限を過ぎると遅延手数料が発生し、遅延期間に応じて段階的に増加します。

提出時期 私会社の手数料
設立記念日から42日以内 HK$105
42日超〜3ヶ月以内 HK$870
3ヶ月超〜6ヶ月以内 HK$1,740
6ヶ月超〜9ヶ月以内 HK$2,610
9ヶ月超 HK$3,480

Annual Returnの提出は会社秘書役の中心的な業務の一つです。期限内(42日以内)に提出することで、HK$105の手数料で手続きを完了できます。提出を忘れると手数料が最大でHK$3,480まで増加します。会社秘書役が期限を管理することで、余計な費用の発生を防ぐことができます。

TCSP(信託・会社サービス提供者)ライセンスとSCR

2018年3月1日から、香港のすべての会社は重要支配者登録簿(Significant Controllers Register、SCR)を整備することが義務付けられました。SCRは会社の実質的な支配者に関する情報を記録する登記簿で、会社が自社の登録事務所に備え置く必要があります。当局からの要請に応じて開示する義務があります。

SCRの管理を支援するため、会社はTCSP(Trust or Company Service Provider)ライセンスを持つ事業者を指定代表(Designated Representative)として任命することが求められます。TCSPライセンシーを会社秘書役に任命することで、Annual Returnの提出からSCRの管理まで一括して対応できます。

TCSPライセンスは香港の会社登記局が管轄するライセンスであり、信託や会社設立・管理業務を提供する事業者に義務付けられています。SCRの整備を怠ったり、正確な情報を記録しなかった場合には、HK$25,000(Level 4)の罰則が科される可能性があります。適切な管理体制を整えることが求められます。

SCRには、会社の株式または議決権の25%以上を保有する個人(実質的支配者)の氏名・住所・国籍・保有割合などを記載します。会社秘書役は、これらの情報を常に最新の状態に保つ義務を担います。変更が生じた場合は速やかに更新が必要です。指定代表としてのTCSPライセンシーは、当局からSCR関連の問い合わせを受ける窓口としても機能します。

会社設立後の法定スケジュール

香港法人を設立した後は、会社秘書役を中心に以下の年次スケジュールを管理します。毎年の設立記念日を基準に、Annual Returnの提出期限(42日以内)を把握しておくことが出発点となります。

また、利得税(Profits Tax)の申告においても、会計年度終了後に申告書の提出が必要です。会社秘書役が税務当局からの通知を受領し、担当の会計士・税理士へ連絡する役割を担います。会社秘書役と会計士・税理士が連携することで、法定義務を漏れなくこなすことができます。

取締役・株主の変更があった場合は、変更後速やかに会社登記局へ届出を行います。変更届は会社秘書役が準備・提出します。登録事務所の住所が変わった場合も同様の届出が必要です。

会社秘書役を選ぶ際の確認事項

会社秘書役を選ぶ際には、TCSPライセンスの有無を確認することが出発点となります。ライセンスを持たない個人や法人を会社秘書役に任命しても、SCRの指定代表としての法的要件を満たせません。香港の会社登記局のウェブサイトでTCSPライセンシーの一覧を確認できます。

また、会社秘書役は単に書類を提出するだけでなく、取締役や株主との連絡調整、当局からの通知の転送なども担います。日本の親会社との連絡に対応できる英日バイリンガルの会社秘書役を選ぶと、コミュニケーションがスムーズになります。サービスの範囲と費用を事前に確認したうえで選任することをお勧めします。

会社秘書役サービスのご相談

当社は各国で認可を受けた現地事業者と連携し、香港の会社秘書役サービスを提供しています。Annual Returnの準備・提出、SCR管理、登録事務所の維持など、法定要件に対応したサポートをご提供します。

会社秘書役サービスの費用については、料金ページをご覧ください。お問い合わせはお問い合わせフォームまたは電話(050-4560-1792、平日10:00〜19:00 日本時間)にてお気軽にどうぞ。

香港への会社設立から継続的な法令遵守まで、一貫したサポートについては会社秘書役・登録住所の手配ページもあわせてご覧ください。

出典

  • 香港会社登記局(Companies Registry)「Companies Ordinance Cap.622 Section 474, 475」(確認日 2026-10-17)https://www.elegislation.gov.hk/hk/cap622
  • 香港会社登記局(Companies Registry)「Annual Return – Private Company」(確認日 2026-10-17)https://www.cr.gov.hk/en/public/fees.htm
  • 香港会社登記局(Companies Registry)「Significant Controllers Register」(確認日 2026-10-17)https://www.cr.gov.hk/en/compliance/scr.htm

この記事は、公的機関が公開している情報をもとに、制度の一般的な内容を説明したものです。個別の税務の判断は税理士が行います。制度は改正されることがあるため、手続きの前に最新の情報をご確認ください。

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