
マレーシアの会社形態と設立機関
マレーシアで事業を行う外国企業が多く選ぶ会社形態は、株式有限責任の私会社(Private Limited Company、通称 Sdn. Bhd. / Sendirian Berhad)です。根拠法は Companies Act 2016(Act 777)で、設立手続きは会社委員会(Companies Commission of Malaysia、SSM)が管轄します。
申請は SSM が提供する MyCoID 2016 オンラインポータルを通じて行います。申請書の提出からほぼすべての手続きをオンライン上で完結できるため、物理的にマレーシアを訪問しなくても設立できます。ただし、取締役のうち最低1名はマレーシア居住者でなければならないという要件があります。日本に居住する方のみで設立する場合は、マレーシア居住の取締役を別途手配する必要があります。
マレーシアの法人税率は原則24%(2023年度以降)ですが、払込資本が一定以下の中小企業(SME)には段階税率が適用されます。共通報告基準(CRS)については2018年から日本との情報交換が開始されており、マレーシアの法人口座情報は日本の税務当局へ報告される仕組みとなっています。税務上の取り扱いは個別の事業内容によって異なるため、税理士など専門家にご確認ください。
設立の流れ
マレーシアの私会社設立は、主に次の6つのステップで進みます。会社秘書役の任命が設立後30日以内に必要となるため、事前に候補者を決めておくとスムーズです。
- 会社名の予約(MyCoID 2016 ポータル)
使用したい会社名を SSM の MyCoID 2016 ポータルで検索・予約します。会社名は英語または英語とマレー語の組み合わせで登録します。既存の商号・商標と類似しない名称を選びます。 - 設立申請書類の準備
取締役・株主の情報、登記事務所住所、会社の事業目的などを記入した申請書を準備します。定款(Constitution)は任意ですが、作成することで会社内部のルールを明確にできます。 - SSMへのオンライン申請
MyCoID 2016 ポータルから申請書を提出します。設立登記料は RM1,000(株式有限私会社)です。 - 設立証明書の受領
SSM による審査完了後、設立証明書(Certificate of Incorporation)が発行されます。 - 会社秘書役の任命
設立から30日以内に、SSM 認定資格者かつマレーシア市民または永住権保有者である会社秘書役を任命します。会社秘書役は法令遵守・書類管理の中心を担います。 - 年次義務体制の整備
登記事務所の設置、実質的支配者(Beneficial Owner、BO)届出の準備、会計体制の構築を行います。
設立時の書類と費用一覧
設立および設立後の主な手続きと公的費用を次の表に示します。当社サービス料金は含みません。詳細は 料金ページ をご覧ください。
| 手続き・費用項目 | 金額・期限 |
|---|---|
| 設立登記(株式有限私会社) | RM1,000 |
| 会社秘書役の任命 | 設立から30日以内 |
| 年次申告(Annual Return) | RM150(周年日から30日以内・私会社) |
| 実質的支配者(BO)届出 | 周年日から30日以内 |
| 登記事務所変更の届出 | 変更から14日以内 |
設立時の最低要件
マレーシア Sdn. Bhd. を設立するための主な最低要件は次のとおりです。日本居住の方が設立を希望する場合は、マレーシア居住者の取締役の確保が最初の課題となります。
- 取締役
- 最低1名の取締役が必要です。そのうち最低1名はマレーシア居住者(市民・永住権保有者またはマレーシアに居住する外国人)でなければなりません。18歳以上であることが求められます。
- 会社秘書役
- 設立から30日以内に任命が必要です。SSM 認定資格を持つマレーシア市民または永住権保有者でなければなりません。会社秘書役は年次申告・変更届出など多くの法定手続きを担います。
- 株主
- 最低1名・最大50名まで株主になれます。個人・法人を問いません。外国人が100%株主となることも可能です(業種によっては外資規制あり)。
- 最低払込資本金
- 法令上の最低資本金はありません。ただし、就労ビザ(Employment Pass)申請には別途要件があります。
- 定款(Constitution)
- 株式有限会社では任意です。作成する場合は会社内部のルールを詳細に定められます。
- 登記事務所
- マレーシア国内の住所が必要です。変更する場合は14日以内に SSM へ届け出ます。
設立後の年次義務
マレーシアの私会社は設立後に次の義務が継続します。期限を遵守することで、SSM からのペナルティを回避できます。会社秘書役が多くの手続きを管理するため、信頼できる会社秘書役の選任が業務遂行の基盤となります。
- 年次申告(Annual Return)の提出:周年日から30日以内。手数料 RM150。
- 実質的支配者(BO)の届出:周年日から30日以内。発行済み株式の25%超を保有する者を登録します。
- 財務諸表の提出:年次申告とともに SSM へ提出(一定の小規模会社は監査免除あり)。
- 法人税申告(e-Filing):決算後7ヶ月以内。マレーシア内国歳入局(LHDN)に提出します。
- 源泉徴収税(Withholding Tax):非居住者への支払いに適用される場合があります。支払日から1ヶ月以内に LHDN へ納付します。
監査免除制度について
マレーシアでは2025年1月1日以降、一定の要件を満たす小規模私会社は法定監査が免除されます(Practice Directive 10/2024)。免除対象となるには次の3つの基準のうち2つ以上を満たす必要があります。
- 年間売上RM3,000,000以下
- 総資産RM3,000,000以下
- 従業員30名以下
監査免除の対象となるかどうかは会計・税務の専門家に確認の上、適切に対応してください。
税制の概要
マレーシアの法人税率は標準24%です(2023年度以降)。払込資本が RM2,500,000 以下かつ総収入が RM50,000,000 以下の中小企業(SME)には段階税率が適用されます。
| 課税所得 | 税率(YA 2023〜2024) |
|---|---|
| RM150,000 以下 | 15% |
| RM150,001〜RM600,000 | 17% |
| RM600,000 超 | 24% |
サービス税(Sales and Service Tax)について
マレーシアでは2024年3月1日以降、サービス税率が8%に変更されています(一部業種は6%の例外あり)。特定のサービス業を営む場合はサービス税の登録が求められることがあります。サービス税の登録要件や申告義務については、事業開始前に専門家を通じて確認することをお勧めします。
日本との税務上の関係
日本・マレーシア間には租税条約が締結されており、配当・利子・使用料に対する源泉徴収税率が軽減されます。条約に基づく配当源泉税率は25%以上保有する法人株主の場合に5%、その他の場合に15%が適用されます。利子の源泉税率は10%で、使用料も同じく10%です。
日本居住者または日本の法人がマレーシア会社を50%超保有する場合、日本の外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン対策税制)の適用対象となる可能性があります。マレーシアの標準法人税率は24%であり、外国子会社合算税制の判定基準(租税負担割合20%未満)を上回ります。ただし SME段階税率の適用・免税措置・損金算入等により実効税率が変わる場合があります。個別の判定は税理士などの専門家にご確認ください。
また、マレーシアは共通報告基準(CRS)の下で2018年から日本との金融口座情報の自動的交換を開始しています。マレーシアの口座情報は日本の国税庁へ提供されます。
銀行口座開設について
マレーシア私会社の法人口座は現地の銀行で開設します。口座開設の可否は各金融機関の審査基準によって判断されるものです。設立証明書・定款・取締役の本人確認書類・事業計画書などを準備しておく必要があります。取締役がマレーシア国内で直接審査に対応できる場合は、口座開設のプロセスが円滑に進みやすい傾向があります。詳細については 海外銀行口座開設の支援 ページをご参照ください。
関連ページ
会計・税務サポートについて
マレーシアでは毎年の法人税申告・年次申告・BO届出などの義務が継続します。現地の会計事務所や会社秘書役サービスを活用することで、コンプライアンスを維持しながら事業に集中できます。ADEGでは現地認可事業者と連携した会計・年次申告サポートを提供しています。詳細は 会計・年次申告の支援 ページをご参照ください。
無料相談のご案内
マレーシア法人の設立についてご不明な点は、ADEGにお気軽にご相談ください。各国で認可を受けた現地事業者と連携して手続きを進めます。お電話は050-4560-1792(平日10:00〜19:00 日本時間)にて承ります。
出典
- Companies Commission of Malaysia(SSM)「Companies Act 2016(Act 777)」(確認日 2026-10-17)https://www.ssm.com.my/
- マレーシア内国歳入局(LHDN)「法人税(Corporate Tax)」(確認日 2026-10-17)https://www.hasil.gov.my/
- SSM「Practice Directive 10/2024(監査免除)」(確認日 2026-10-17)https://www.ssm.com.my/
この記事は、公的機関が公開している情報をもとに、制度の一般的な内容を説明したものです。個別の税務の判断は税理士が行います。制度は改正されることがあるため、手続きの前に最新の情報をご確認ください。