海外法人の維持費の相場と内訳

最終更新 (日本時間) 執筆 KSKパートナーズ株式会社

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海外法人の維持費とは

海外法人の維持費とは、設立後に毎年発生する法定費用の総称です。大きく分けると、政府機関への登録・申告に要する公的費用と、会計・秘書役・法務サービスの外部委託費用の2種類があります。設立コストは一度だけ発生しますが、維持費は法人が存続する限り毎年かかります。事業計画には設立費用だけでなく年次の維持費も含めて試算することが大切です。

公的費用は法定の金額が公開されており、比較的見積もりやすい部分です。一方、会計事務所・秘書役サービス・登記住所提供サービスの外部委託費用は事業規模・取引件数・サービス内容によって変動します。このページでは主に一次情報(政府機関の公表値)から確認できる公的費用を中心に扱います。

香港法人の年次公的費用

香港で設立されたプライベートカンパニーリミテッドには、毎年の事業登録(Business Registration)と年次申告(Annual Return)の2つの主な公的義務があります。どちらも期限内に手続きを済ませることで費用を抑えられます。

項目 費用 備考
事業登録料(1年更新) HK$2,200 適用期間:2024年4月1日〜2025年3月31日
事業登録料(3年更新) HK$5,870 一括3年分・同期間の適用額
Annual Return(期限内提出・私会社) HK$105 設立日の周年日から42日以内
Annual Return(9ヶ月超遅延) HK$3,480 期限超過で段階的に増額される

Annual Returnは提出が遅れるほど費用が増加するため、期限を厳守することが求められます。会社秘書役(Company Secretary)は香港に通常居住する個人または香港に事務所を有する法人から選任する義務があり、その費用も年次維持費に含まれます。取締役が唯一の場合、同一人が会社秘書役を兼務することはできないため、別途秘書役を手配する必要があります。

香港のプライベートカンパニーには法定監査(Statutory Audit)の義務があります。監査法人への費用は取引量や会計の複雑さによって異なりますが、設立後約18ヶ月で最初の税務申告期限が到来するため、設立直後から会計記録を整備しておくことが必要です。利得税は課税所得HK$200万以下の部分に8.25%、超過分に16.5%の2段階税率が適用されます。

ラブアン法人の年次公的費用

マレーシアのラブアン連邦直轄領に設立したラブアン会社(Labuan Company)は、毎年ラブアン金融サービス局(Labuan Financial Services Authority:LFSA)への年次料の支払いが義務付けられています。支払期限は毎年1月15日です。

項目 費用 適用期間
LFSA年次料(ラブアン会社) USD 800 支払期限:毎年1月15日(〜2025年12月末)
LFSA年次料(ラブアン会社・改定後) USD 1,000 適用開始:2026年1月1日(改定後)
税率(トレーディング活動・実質要件充足) 3% 監査済み純利益に対して
税率(非トレーディング活動) 0% 投資保有が主の法人
税率(実質要件未充足の場合) 24% マレーシア通常法人税率が適用

ラブアン法人の公的費用で特に注意が必要なのは、実質要件(Substance Requirements)への対応コストです。ラブアン事業活動税法に基づき、3%の優遇税率(トレーディング活動)の適用を受けるためには、ラブアンに物理的な事務所を設置し、適切な数のフルタイム従業員をラブアンに常駐させ、適切な額の年次運営費用をラブアンで支出することが求められます。これらの実質要件を満たさない場合、マレーシアの通常法人税率24%が適用されることになります。

また、ラブアン法人の税務申告は2025課税年度(YA 2025)からセルフアセスメント制度(Self-Assessment System)が導入されました。申告書はMyTaxポータルからForm e-LE1を通じて電子申告し、申告期限は決算後7ヶ月以内です。監査済み財務諸表がトレーディング活動の課税ベースとなるため、監査費用も年次コストとして見込む必要があります。

マレーシア法人の年次公的費用

マレーシア本土に設立したSdn Bhd(Sendirian Berhad、私会社)は、会社委員会(Suruhanjaya Syarikat Malaysia:SSM)への年次申告と法人税申告が主な年次義務です。

項目 費用 備考
SSM年次申告料(私会社) RM150 設立日の周年日から30日以内
法人税率(標準) 24% 課税所得に対して
中小企業向け優遇税率(課税所得RM150,000まで) 15% 資格要件を満たす会社に適用
中小企業向け優遇税率(RM150,001〜RM600,000) 17% 同上
中小企業向け優遇税率(RM600,001以上) 24% 同上

マレーシア法人には会社秘書役(Company Secretary)の任命が設立後30日以内に義務付けられており、秘書役はSSMが認定した専門団体の会員またはSSMにより資格付与された者でなければなりません。マレーシア市民または永住権保有者でマレーシアに通常居住していることも要件の一つです。秘書役への年次サービス料は別途発生します。

マレーシア法人の法人税申告(Form C)は事業年度終了後7ヶ月以内にMyTaxポータルから電子申告します。一定規模以下の小規模私会社については、2024年改定(Practice Directive 10/2024)に基づく監査免除基準を満たす場合、法定監査が免除される場合があります。ただし免除要件の充足確認は毎期必要です。

外国子会社合算税制が維持費に与える影響

海外法人の維持費を考える際、見落とされがちなのが日本の税務コストです。外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)では、日本の居住者・内国法人が支配する外国関係会社について、一定の要件に該当する場合にその所得が日本に合算されます。香港法人の利得税(最高16.5%)やラブアン法人のLBATA税率(3%または0%)は日本の外国子会社合算税制の20%基準を下回るため、経済活動基準の充足確認や合算課税の有無を毎期確認する必要があります。

外国子会社合算税制への対応として、日本の親会社が海外法人の税務状況を確認する費用(税理士費用・書類整備費用)が年次維持費の一部として発生します。適用除外の要件である4つの経済活動基準(事業基準・実体基準・管理支配基準・所在地国基準)を充足していることを証明する書類を継続的に整備しておくことが必要です。

CRSへの対応と年次義務

CRS(Common Reporting Standard、共通報告基準)は、金融機関が非居住者の口座情報を自国の税務当局に報告し、各国当局間で自動的に情報交換する国際的な枠組みです。香港は2017年1月1日からCRSを施行しており、マレーシアも参加しています。海外法人が現地の金融機関に保有する口座の情報は各国の税務当局を通じて日本の国税庁に提供されます。

CRSへの対応として、金融機関から自己申告書(Self-Certification)の提出を求められることがあります。これは口座の実質的な支配者や税務上の居住地を確認するためのものです。外国子会社合算税制に基づく申告が漏れていた場合でも、CRSを通じて海外の口座情報が日本の税務当局に把握される可能性があります。正確な税務申告を継続することと、書類を年次で整備しておくことが基本的な対応です。

海外法人を保有する日本の居住者で、年の12月31日時点における国外財産の合計額が一定額を超える場合には、国外財産調書の提出義務が生じることもあります。海外法人への出資持分や海外銀行口座の残高も対象に含まれるため、年次の資産把握と申告作業も維持コストの一部と考えることが必要です。

専門家への相談

海外法人の維持費は公的費用だけでなく、現地会計・監査・秘書役サービスの外部委託費用、日本での税務申告費用、外国子会社合算税制への対応費用など複数の要素で構成されます。設立国・事業内容・取引量によって費用水準が変わるため、事前に専門家から個別の見積もりを取ることが大切です。個別の税務判断は必ず税理士にご相談ください。

ADEGでは、各国で認可を受けた現地事業者と連携し、海外法人の設立から年次の会計・申告・秘書役サービスのサポートまでをご提供します。維持費を含めたコスト全体のご相談は、フォームまたはお電話(050-4560-1792、平日10:00〜19:00 日本時間)にてお受けしています。料金の詳細は料金ページをご覧ください。

費用はどれくらいかかりますか?

費用は設立国・サービス内容によって異なります。政府に支払う公的費用(香港:設立登記料HK$1,545〜、ラブアン:登録料USD 300〜、マレーシア:設立登記RM1,000など)に加え、当社のサポート費用が別途発生します。詳細は料金ページまたは無料相談でご確認ください。

香港法人の事業登録料はいくらですか?

2024年4月1日から2025年3月31日までの適用料金は、1年証明書でHK$2,200、3年証明書でHK$5,870です。2025/26年度以降の料金は内国歳入局(IRD)の公式サイトでご確認ください。

ラブアン法人の年次費用はいくらですか?

LFSAへの年次料は2026年1月1日以降USD 1,000(毎年1月15日までに支払い)です。それ以前はUSD 800でした。これに加え、信託会社(LTC)への報酬・法定監査費用・税務申告費用が別途発生します。

マレーシアのSdn. Bhd.設立費用はいくらですか?

政府に支払う設立登記費用はRM1,000(株式有限私会社の場合)です。これに当社のサポート費用・会社秘書役費用・会計士費用が別途かかります。詳細は料金ページまたは無料相談でご確認ください。

ラブアン法人の設立にかかる公的費用の目安を教えてください。

LFSAへの主な公的費用は、会社名予約USD 30、登録料USD 300(払込資本金RM50,000以下の場合)、年次料USD 1,000(2026年1月1日以降)です。これに加え、信託会社(LTC)の報酬・法定監査費用・当社サポート費用が別途かかります。詳細は料金ページをご覧ください。

マレーシア法人の年次費用はどれくらいですか?

SSMへの年次申告書提出手数料はRM150(私会社)です。このほか、会社秘書役報酬・法定監査費用・税務申告費用・当社サポート費用が別途かかります。詳細は料金ページまたは担当者にご確認ください。

出典

  • 香港政府・税務局「Business Registration Fees」(確認日 2026-10-17)https://www.ird.gov.hk/eng/pdf/brfee.pdf
  • 香港会社登記局(Companies Registry)「Annual Return」(確認日 2026-10-17)https://www.cr.gov.hk/en/companies_ordinance/annual_return_private.htm
  • ラブアン金融サービス局(LFSA)「Labuan Companies FAQ」(確認日 2026-10-17)https://www.labuanfsa.gov.my/areas-of-business/labuan-structures/labuan-companies/faq
  • LFSA「Notice on 2026 Annual and Licence Fees(Revised Fee Structure)」(確認日 2026-10-17)https://www.labuanfsa.gov.my/clients/asset_120A5FB8-61B6-45E8-93F0-3F79F86455C8/contentms/img/documents/Legislation_and_Guidelines/Guidelines/general/2025/Notice-on-2026-Annual-and-Licence-Fees_Revised-Fee-Structure-Effective-1-Jan-2026_11112025.pdf
  • マレーシア会社委員会(SSM)「Annual Submission」(確認日 2026-10-17)https://www.ssm.com.my/Pages/Register_Business_Company_LLP/Company/Annual-Submission.aspx
  • マレーシア国税庁(HASiL)「Company Taxpayer Responsibilities」(確認日 2026-10-17)https://www.hasil.gov.my/en/syarikat/tanggungjawab-pembayar-cukai/
  • 国税庁「外国子会社合算税制に関するQ&A(平成29年度改正関係等)」(確認日 2026-10-17)https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/180111/pdf/01.pdf
  • 国税庁「共通報告基準(CRS)に基づく自動的情報交換」(確認日 2026-10-17)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kokusai/crs/index.htm

この記事は、公的機関が公開している情報をもとに、制度の一般的な内容を説明したものです。個別の税務の判断は税理士が行います。制度は改正されることがあるため、手続きの前に最新の情報をご確認ください。

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