香港法人税(利得税)の仕組みをわかりやすく解説

最終更新 (日本時間) 執筆 KSKパートナーズ株式会社

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香港の法人税は「利得税」と呼ばれる

香港における法人税は、正式には利得税(Profits Tax)と呼ばれます。日本の法人税と同様に事業所得に対して課される税ですが、課税対象の範囲と税率の水準が大きく異なります。

利得税を管轄するのは、香港内国歳入局(Inland Revenue Department、以下IRD)です。法人(会社)と非法人事業(個人事業主・パートナーシップ等)では適用税率が異なり、さらに課税所得の規模によって2段階で税率が変わる仕組みになっています。

香港に法人を設立して事業を行う場合、各課税年度(4月1日〜翌3月31日)の終了後、IRDから送付される利得税申告書に従って申告・納付する義務があります。申告書は期限内に提出し、確定した税額を期日までに納めなければなりません。

2段階税率の仕組みと関連企業の特例

2018/19年度から、利得税には2段階税率制度が導入されています。法人の場合、課税所得のうちHK$200万以下の部分には低税率が、HK$200万を超える部分には通常税率が適用されます。非法人事業(個人事業主・パートナーシップ等)にも同様の2段階税率が設けられていますが、適用される率が異なります。

香港利得税の税率(2018/19年度以降)
事業者区分 課税所得区分 税率
法人(会社) HK$200万以下の部分 8.25%
法人(会社) HK$200万超の部分 16.5%
非法人事業(個人事業主等) HK$200万以下の部分 7.5%
非法人事業(個人事業主等) HK$200万超の部分 15%

ただし、低税率を享受できるのは関連企業グループのうち1社のみという制限があります。関連企業とは、一方が他方の50%超を支配する関係、または同一の第三者が双方の50%超を支配する関係にある法人を指します。複数の関連法人を設立してすべてに低税率を適用することはできないため、グループ内での会社設計には注意が必要です。

領土主義課税:香港源泉所得のみが課税対象

香港の利得税で最も重要な特徴が領土主義課税(源泉地主義)です。課税対象となるのは「香港で生じた、または香港から生じた」事業所得に限られ、海外で生じた所得は原則として課税されません。

たとえば、香港法人が日本やシンガポールでのコンサルティングから得た報酬は、香港外での取引として利得税が免除されるケースがあります。ただし、所得が「香港源泉」か「海外源泉」かの判定は事実関係にもとづいてIRDが個別に判断します。契約の締結・交渉・意思決定が香港で行われた場合は香港源泉と判断されやすく、実態に即した業務遂行体制の整備が求められます。

この領土主義課税は、後述のFSIE制度(2023年1月施行)により、多国籍企業グループが受け取る一部の受動的所得については例外が設けられています。

配当・キャピタルゲインへの課税

香港では、配当に対する源泉徴収税がありません。香港法人が親会社や株主に配当を支払う際、香港側で源泉税が課されないため、日本法人や個人株主への利益還元がスムーズです。受け取る側(日本法人)では、外国子会社配当益金不算入制度の要件を満たすかどうかの確認が別途必要です。

また、株式や不動産の売却益(キャピタルゲイン)も原則として利得税の対象外です。ただし、反復的な売買を業とするトレーディング目的の取引については事業所得と判断される場合があり、課税対象となることがあります。投資目的かトレーディング目的かはIRDが実態から総合的に判断するため、事業の性質を明確にしておくことが求められます。

なお、香港法人が日本法人または日本の個人株主に配当を送金する際、日本側では外国子会社配当益金不算入制度や総合課税(個人の場合)の適用を別途検討する必要があります。日本法人が25%以上の株式を6ヶ月以上保有する香港子会社から受け取る配当の95%は益金不算入となります。個人が受け取る場合は総合課税または申告分離課税の対象となるため、税理士にご確認ください。

FSIE制度と受動的所得への課税(2023年1月~)

2023年1月1日から、香港ではFSIE(Foreign-Source Income Exemption)制度が施行されています。これは、多国籍企業グループのメンバーが香港法人を通じて受け取る海外源泉の特定受動的所得について、一定の免除要件を満たさない限り香港で課税する制度です。2024年1月1日には対象所得の範囲が拡大されました。

課税対象となりうる受動的所得は、利子・配当・知的財産ロイヤルティ・株式等の資本的処分益です。免除を受けるためには、経済実質要件または参加免除(Participation Exemption)の要件を満たす必要があります。参加免除(配当・資本的処分益)の適用には、配当元や処分する株式を5%以上かつ12ヶ月以上継続して保有していることなどが条件とされます。

FSIE制度は主に大規模な多国籍企業グループのメンバーを対象としており、単独経営の中小規模法人には直接影響しないケースが多いです。ただし、グループ間に資本関係や取引がある場合は、FSIE適用の有無を専門家に確認することをお勧めします。

グローバル最低税(HKMTT)との関係(2025年~)

2025年1月1日以後に開始する会計年度から、香港でもグローバル最低税(HKMTT: Hong Kong Minimum Top-up Tax)が適用されています。OECDのPillar 2ルールにもとづき、年間連結収益がEUR7.5億を超える多国籍企業グループのメンバーには、実効税率が15%を下回る場合に上乗せ課税が行われます。

この制度は大規模な多国籍企業グループを対象としており、香港に拠点を置く中小規模法人には通常影響しません。ただし、グループ全体の連結売上高が閾値を超える企業グループについては、香港子会社の利得税負担率を確認し、追加課税の有無を把握しておくことが必要です。

日本の外国子会社合算税制と香港法人

日本居住者が支配する香港法人は、外国子会社合算税制(租税特別措置法第66条の6以下)の対象となる可能性があります。合算課税の対象となる「対象外国関係会社」の要件の一つに、本店所在地国の租税負担割合が20%未満であることが挙げられます。

香港法人の実際の利得税負担割合は、課税所得の規模や領土主義課税による源泉判定によって変動します。課税所得HK$200万以下の部分は8.25%、超過部分は16.5%と、いずれも20%を下回る水準です。そのため、日本の法人株主や個人株主が存在する香港法人は、合算課税の対象に該当するかどうかの確認が必要です。

ただし、事業基準・実体基準・管理支配基準・非関連者基準(または所在地国基準)の4つの経済活動基準をすべて満たす能動的事業法人は、合算課税の対象外とされます。香港で実態のある事業を現地で管理・遂行している法人は除外される場合がありますが、この判定には専門的な税務分析が必要です。個別の要件充足の可否は税理士にご確認ください。

CRSによる香港口座情報の自動交換

香港は2017年1月1日からCRS(共通報告基準:Common Reporting Standard)を施行しており、日本は香港の最初の情報交換パートナーです。香港の金融機関は、日本居住者が保有する口座の残高・利子・配当等の情報を毎年IRDに報告し、IRDから日本の国税庁に自動的に提供されます。

CRSにより、香港法人の口座情報も日本の税務当局に通知されます。適切な利得税申告と日本側の税務申告を並行して行うことが求められており、申告漏れや過少申告はCRS情報との照合で発覚するリスクがあります。

香港の金融機関は、口座残高・利子・配当などの情報を毎年IRDに提出し、IRDが日本の国税庁に自動提供します。対象となる口座には、個人口座だけでなく法人口座も含まれます。香港法人を設立して法人口座を保有する場合、その口座の情報も交換対象となることを前提に、申告書類を整えておく必要があります。日香港租税協定の枠組みとCRSによる情報交換の両面から、税務当局は香港との資金の流れを把握できる体制になっています。

税務専門家への相談

香港法人の利得税は、日本の外国子会社合算税制・外国税額控除・CRSなど、複数の税制が複雑に絡み合います。個別の税負担を正確に把握し、適切な対応を取るためには、日本と香港の両方の税制に詳しい税理士への相談が必要です。

ADEGでは、香港法人設立の初期相談から現地で認可を受けた事業者と連携した設立手続き、設立後の会計・申告代行まで、日本語でご支援します。まずはお気軽に無料相談フォームまたはお電話(050-4560-1792、平日10:00〜19:00 日本時間)にてご連絡ください。

出典

  • 香港内国歳入局(Inland Revenue Department)「2段階利得税制度(Two-tiered Profits Tax Rates Regime)」(確認日 2026-10-17)https://www.ird.gov.hk/eng/tax/bus_pft.htm
  • 香港内国歳入局(Inland Revenue Department)「外国源泉所得免除制度(FSIE Regime)」(確認日 2026-10-17)https://www.ird.gov.hk/eng/tax/bffs_prs.htm
  • 香港内国歳入局(Inland Revenue Department)「グローバル最低税 BEPS 2.0(HKMTT)」(確認日 2026-10-17)https://www.ird.gov.hk/eng/tax/beps2.htm

この記事は、公的機関が公開している情報をもとに、制度の一般的な内容を説明したものです。個別の税務の判断は税理士が行います。制度は改正されることがあるため、手続きの前に最新の情報をご確認ください。

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