ラブアンと香港の違いを比較

最終更新 (日本時間) 執筆 KSKパートナーズ株式会社

ラブアンと香港の違いを比較のイメージ写真

ラブアンとは、マレーシア連邦直轄地であるボルネオ島北西のラブアン島に設立する法人のことです。オフショア金融センターとして3%の低税率が注目されますが、香港との違いを正確に理解したうえで選択することが求められます。税率・実体要件・設立手続き・銀行口座・日本の税制との関係において、両地域は大きく異なります。当社(ADEG)はラブアン・香港どちらの設立もサポートしており、各国で認可を受けた現地事業者と連携して手続きを進めます。

基本情報の比較

項目 ラブアン 香港
主な会社形態 Labuan Company(LLC/PLC) 株式有限責任私会社
名称予約 USD30(24時間以内) 会社登記局の審査
設立登記料 USD300(資本金RM5万以下) HK$1,545(電子申請)
年次更新料 USD1,000(2026年1月1日以降) HK$105(期限内)+HK$2,200(事業登録)
居住取締役要件 不要 不要
監督機関 LFSA(ラブアン金融サービス機関) 会社登記局・内国歳入局
法人税率 3%(取引)/ 0%(非取引)/ 24%(実体なし) 8.25%(HK$200万以下)/ 16.5%

税制の違い

ラブアンの税制

ラブアン法人は取引活動(Trading Activity)に対して監査済み純利益の3%、投資保有・ロイヤリティ受取などの非取引活動(Non-Trading Activity)に対して0%の税率が適用されます。ただしこの優遇税率は、ラブアン島内に実体がある場合に限られます。実体要件(Substance Requirement)を満たさない場合はマレーシア国内の標準税率(24%)が適用されます。固定税(RM20,000)の選択制度は2019年に廃止されています。

2025年度(YA 2025)以降は自己申告制(SAS: Self-Assessment System)が導入されており、税務申告は事業年度終了後7ヶ月以内(電子申告は8ヶ月以内)に行います。申告期限や取引活動・非取引活動の区分については、LFSAの認可を受けたラブアントラスト会社(LTC)または現地税務の専門家に相談することをお勧めします。

香港の利得税

香港は源泉地主義(Territorial Source Principle)を採用しており、香港外で締結・履行された取引の利益には利得税が課されません。2018/19年度以降、課税所得HK$200万以下に8.25%、超過分に16.5%の2段階税率が適用されます。関連企業グループ内では1社のみが低税率を選択できます。

2023年1月1日以降は多国籍企業グループを対象に外国源泉所得免税制度(FSIE)が施行されており、配当・利子・ロイヤリティ・キャピタルゲインの受動的収入には経済実質の立証が求められます。

実質要件(Substance)の違い

ラブアンの実体要件は、活動の種類ごとに最低人員・最低運営費用が定められています。管理サービス会社の場合はラブアン島内でのフルタイム従業員2名以上・運営費用RM5万以上(年間)が目安です。アウトソーシング契約社員はフルタイム従業員としてカウントされません。物理的なオフィスをラブアン島内に構え、実際の業務指示・意思決定が現地で行われることが条件です。

香港では多国籍企業グループ以外は実体要件を課していません。取締役が香港外に居住する場合でも法人を合法的に維持できます。ただし利得税の源泉地判断(利益が香港に源泉するかどうか)は個々の取引実態により異なるため、申告にあたっては専門家の助言を得ることをお勧めします。

設立手続きの流れ

ラブアン法人の設立は、LFSAの認可を受けたラブアントラスト会社(LTC: Labuan Trust Company)を通じた手続きが必須です。名称予約(USD30)はLFSAへの申請から通常24時間以内に承認されます。設立後の年次更新料は2026年1月1日からUSD1,000(支払期限1月15日)に引き上げられています。

香港法人の設立は会社登記局(Companies Registry)の電子申請(e-Incorporation)またはロックボックス申請で行います。電子申請の設立登記料はHK$1,545、紙申請はHK$1,720です。事業登録証明書(Business Registration Certificate)は内国歳入局(IRD)が発行し、年間費用はHK$2,200(1年証明書)です。

銀行口座の難易度

ラブアン法人の銀行口座は、ラブアン島内のオフショア銀行または本土マレーシアの銀行で開設する場合と、第三国(香港・シンガポール等)の銀行で開設する場合があります。いずれも実体要件・事業内容の説明・実質的支配者情報の提出が審査の中心です。審査の際には、ラブアン法人の事業活動がLFSA認可の取引活動または非取引活動のいずれに該当するかを明確に説明できる資料を準備します。口座の開設可否は各行が判断します。

香港法人の口座は香港域内の銀行で開設するケースが一般的です。香港金融管理局(HKMA)の AML/CFT 指針により、銀行は正当な理由なく申請を拒否することが禁止されていますが、審査基準は各行が設定しています。取締役が非居住者の場合も申請可能ですが、対面手続きを求める銀行があります。重要管理者登記制度(SCR)に基づく実質的支配者(持分25%以上)の書類を整えておくと審査がスムーズに進むことがあります。

年次申告と記帳義務

ラブアン法人は2025年度以降、自己申告制(SAS)により事業年度終了後7ヶ月以内(電子申告は8ヶ月以内)に税務申告を行います。取引活動法人は監査済み純利益を基に3%を計算・申告します。非取引活動法人は0%ですが申告義務はあります。会計帳簿の保存は申告確定後も一定期間求められます。

香港法人は内国歳入条例(Inland Revenue Ordinance)第51C条により、事業記録を7年間保存する義務があります。年次報告書(Annual Return)は設立記念日から42日以内に会社登記局へ提出します。初回の利得税申告書(Tax Return)は設立から18ヶ月以内が一般的な目安で、その後は毎年申告します。

日本の税制との関係

ラブアンの法人税率(3%/0%)は日本の外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)の20%の基準を大きく下回ります。そのため、日本居住者が株式の50%超を保有するラブアン法人は、経済活動基準(事業基準・実体基準・管理支配基準・所在地国基準)の充足が問われます。実体基準の判断では、ラブアンに固定施設があり従業員が実際に業務を行っているかどうかが審査の中心となります。

香港の利得税率(8.25%〜16.5%)も20%の基準を下回る可能性があり、同様に経済活動基準の確認が必要です。なお、日本・マレーシア租税条約はラブアンの優遇税制には適用されないことが一般的に理解されており、ラブアンから日本への配当送金時の税務処理には注意が必要です。日本・香港租税協定(2011年8月14日発効)はラブアンには適用されません。香港法人については同条約の規定が適用されますが、具体的な源泉徴収税率は財務省の公式資料でご確認いただくか、税理士にお問い合わせください。

CRS(共通報告基準)に基づき、ラブアン(マレーシア)は2018年から、香港は2017年から日本を含む各国と金融口座情報を自動交換しています。日本居住者で5,000万円超の国外財産を保有する場合は国外財産調書の提出義務も生じます。個別の税務判断は必ず税理士にご相談ください。

どちらを選ぶか

税率だけを見るとラブアンが有利に見えますが、実体要件の充足・設立・維持コスト・銀行口座の取得難易度・日本の合算課税リスクを総合して判断する必要があります。現地に実際の事業拠点(オフィス・従業員)を構える意思がある場合はラブアンが選択肢になります。一方、日本から遠隔で管理する場合は香港の方が手続きの柔軟性があります。また、ラブアンの年次更新料USD1,000(2026年1月1日以降)にLTCへの費用が加算されるため、維持コストを試算してから判断することをお勧めします。

ラブアンと本土マレーシア法人を組み合わせるスキームや、ラブアン法人の株主として香港法人を置く構成も検討されることがあります。いずれも日本の税制との整合性を確認したうえで設計する必要があります。当社(ADEG)は香港・ラブアン双方の設立代行を行い、各国で認可を受けた現地事業者と連携してサポートします。詳しくは海外法人設立の支援ページをご覧ください。費用の概要は料金ページに掲載しています。

ラブアンとはどのような場所ですか?

ラブアンはマレーシアの連邦直轄領(ボルネオ島北西部の島)で、ラブアン金融サービス局(LFSA)が監督する国際ビジネス金融センターです。ラブアン事業活動税法(LBATA)に基づく優遇税制が適用され、国際的な金融・投資・トレーディング業務の拠点として活用されています。

ラブアン法人の税率はいくらですか?

ラブアン事業活動税法(LBATA)に基づき、トレーディング活動(貿易・サービス等)には監査済み純利益の3%、非トレーディング活動(純粋な投資保有等)には0%の税率が適用されます。ただし優遇税率の適用には実質要件(物理的な事務所・フルタイム従業員の常駐・適切な運営費用の支出)を満たす必要があります。実質要件を満たさない場合は24%の標準税率が適用されます。

ラブアン法人の実質要件とは何ですか?

LFSAのガイドラインでは、ラブアン内に①物理的な事務所(登録事務所ではなく実体を持つ事務所)、②フルタイム従業員、③適切な運営費用の支出という3つの実質要件が求められます。この要件を満たせない場合、LBATAの優遇税率(3%・0%)ではなく24%の標準税率で課税されます。

ラブアン法人の年次費用はいくらですか?

LFSAへの年次料は2026年1月1日以降USD 1,000(毎年1月15日までに支払い)です。それ以前はUSD 800でした。これに加え、信託会社(LTC)への報酬・法定監査費用・税務申告費用が別途発生します。

出典

  • ラブアン金融サービス機関(LFSA)「Labuan Business Activity Tax Act 1990」(確認日 2026-10-17)https://www.lfsa.gov.my/
  • ラブアン金融サービス機関(LFSA)「Annual Fee Schedule」(確認日 2026-10-17)https://www.lfsa.gov.my/en/index.php/labuan-international-business-and-financial-centre/labuan-entities/fees-and-charges
  • 香港内国歳入局(IRD)「2段階利得税 FAQ」(確認日 2026-10-17)https://www.ird.gov.hk/eng/faq/2tr.htm
  • 香港内国歳入局(IRD)「外国源泉所得免税制度(FSIE)」(確認日 2026-10-17)https://www.ird.gov.hk/eng/paf/fsie.htm
  • 会社登記局(Companies Registry)「手数料」(確認日 2026-10-17)https://www.cr.gov.hk/en/services/fees.htm
  • 国税庁「外国子会社合算税制 Q&A」(確認日 2026-10-17)https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/180111/pdf/01.pdf

この記事は、公的機関が公開している情報をもとに、制度の一般的な内容を説明したものです。個別の税務の判断は税理士が行います。制度は改正されることがあるため、手続きの前に最新の情報をご確認ください。

まずは30分の無料相談で、国と順番を決めましょう

Zoomで、事業の内容とお金の流れを伺います。設立する国が決まっていなくても構いません。