
アメリカはIT・EC・コンサルティングなど多くの業種で世界最大の市場であり、米国法人を持つことでビジネスの幅が広がります。日本人は非居住者のまま設立できますが、税務申告・銀行口座・ビザの仕組みを正確に理解しておく必要があります。設立形態・費用・税務申告義務・ビザを実務的な視点で整理します。当社(ADEG)は米国の設立代行は行っていませんが、情報提供と相談受付は可能です。比較検討中の方にはアジア各国拠点との違いもご説明します。
会社形態の比較(LLCとC-Corp)
米国法人の主な選択肢はLLC(有限責任会社)とC-Corp(株式会社)です。
| 項目 | LLC | C-Corp |
|---|---|---|
| 課税方式(デフォルト) | パス・スルー課税(構成員課税) | 法人課税(連邦21%) |
| 株式・持分の発行 | 持分(メンバーシップ・インタレスト) | 株式発行が可能 |
| ベンチャー投資の受入 | 一般的ではない | 標準的な選択肢 |
| 設立州として人気 | Wyoming・Delaware | Delaware |
| 役員・取締役の制限 | 特になし | 取締役会設置が必要 |
日本人が米国で事業を展開する場合、LLC(特にシングルメンバー LLC)が手続き面で選ばれることが多くあります。ただし、日本人がシングルメンバー LLC を持つ場合は米国税法上「外国人所有の無視される法人(Foreign-Owned Disregarded Entity)」となり、Form 5472 の申告義務が生じます。C-Corp は連邦法人税率21%で課税されます。
LLCのパス・スルー課税と外国人への影響
デフォルトでパス・スルー課税が適用される LLC では、法人レベルの課税がなく、損益が直接メンバー(出資者)の所得として帰属します。日本居住者がメンバーの場合、米国源泉所得については米国での申告・課税対象となります。一方、日本国内での課税関係は日本税法で決まるため、二重課税の調整には日米租税条約の活用を検討します。
シングルメンバー LLC はデフォルトで「無視される法人(Disregarded Entity)」として扱われます。これは連邦税の観点で LLC が存在しないものとみなされ、メンバーが直接課税される仕組みです。外国人(日本人を含む非居住外国人)が保有するシングルメンバー LLC は「外国人所有の無視される法人(FODE)」と分類され、Form 5472 の申告義務が課されます。C-Corp を選択した場合は連邦法人税率21%が課税所得全体に適用されます。C-Corp の株主への配当は「二重課税」の対象となり、法人段階と個人段階でそれぞれ課税される点に注意が必要です。
主要2州の設立費用
設立州はサービスの提供先や税務戦略によって選択が変わります。Delaware と Wyoming が日本人に人気の2州です。
| 項目 | Delaware | Wyoming |
|---|---|---|
| LLC設立登録料 | USD 110 | USD 100 |
| 年次フランチャイズ税 | USD 300(LLC) | USD 60 または資産の0.0002倍 |
| 法人税(州) | 所得税あり(法人) | 州所得税なし |
| プライバシー | 設立書類は公開 | メンバー名非公開が可能 |
Delaware は会社法が整備されており、訴訟判例も豊富なため C-Corp の設立地として最も利用されています。LLC の年次フランチャイズ税は USD 300 です。Wyoming は州所得税がなく、LLC メンバーの氏名を非公開にできるプライバシー保護が特徴です。年次ライセンス料は USD 60 または Wyoming内資産の 0.0002 倍(いずれか高い方)です。
税務申告の義務
日本人が保有する米国法人は日米両国での申告義務が生じます。米国では連邦法人税申告書(Form 1120 等)を IRS(内国歳入庁)に提出します。外国人所有の無視される法人(シングルメンバー LLC)はForm 5472 の申告が義務付けられています。Form 5472 の不申告・誤申告には USD 25,000 の罰則が適用されます。
2024年から施行された BOI(Beneficial Ownership Information)申告制度は、2026年以降、米国国内で設立された法人を永久に申告免除とする規則改正が行われました。ただし、外国企業(外国で設立された法人)は引き続き申告対象のままであるため、注意が必要です。
日本の居住者として保有する場合、日本の外国子会社合算税制(CFC)の確認が必要です。米国の連邦法人税率は21%であり、20%の基準を超えますが、州税を加えた実効税率や、特定の免税制度を利用した場合には20%を下回る可能性があります。CRS(共通報告基準)に基づき、米国は FATCAの枠組みで日本と情報交換しています。個別の税務判断は必ず税理士にご相談ください。
銀行口座と実務上の注意
米国法人の銀行口座開設は、設立のみならず実際に米国内での事業運営の有無を問われます。多くの米国銀行は口座開設時に担当者との対面面談を求め、社会保障番号(SSN)またはITIN(個人納税者番号)の提出を要求する場合があります。非居住者がオンラインで開設できるフィンテック系口座(Relay、Mercury など)も存在しますが、利用条件は各社の審査による異なります。
米国法人を維持するには年次申告・フランチャイズ税・登録代理人(Registered Agent)サービス費用が毎年発生します。Delaware LLC の年次フランチャイズ税は USD 300、Wyoming は USD 60 または資産の0.0002倍のいずれか高い方です。登録代理人は州内に常駐するサービスが必要で、年間費用は USD 50〜300 程度が相場です。
ビザ(E-2・L-1A)
米国で就労・経営活動を行うには就労ビザの取得が必要です。日本人に関係するビザとして E-2 条約投資家ビザと L-1A 企業内転勤ビザがあります。
- E-2(条約投資家ビザ):一定規模以上の投資と実質的な事業運営が要件。初回2年間、更新可能。事業が継続する限り更新に上限はありません。
- L-1A(企業内転勤・管理職):1年以上の関連企業での勤務歴が必要。新規設立会社の場合は初回1年間が付与されます。最大7年間の滞在が認められます。
就労ビザの審査は移民局(USCIS)が行います。観光ビザ(B-1/B-2)やESTAでの就労は認められていません。米国での経営活動や報酬の受取には適切なビザの取得が必須です。なお、米国の移民・就労ビザ制度は政策変更が頻繁であるため、申請前に移民弁護士への確認をお勧めします。
EB-5(外国人投資家ビザ)は永住権(グリーンカード)に直接つながる投資ビザですが、投資額が高く、条件も複雑です。中長期的に米国への移住を検討する場合は移民専門弁護士へご相談ください。
日本の税制との関係
日本居住者が米国法人の株主である場合、外国子会社合算税制の確認が必要です。連邦法人税率は21%で20%の基準を上回りますが、適用除外や州税の影響で実効税率が変動する場合があります。事業基準・実体基準・管理支配基準・所在地国基準の4要件をすべて満たせば合算課税から除外されます。
日本と米国の間には租税条約(日米租税条約)があり、配当・利子・使用料の源泉徴収税率について定めが設けられています。具体的な税率は財務省の公式資料でご確認いただくか、税理士にお問い合わせください。CRS(共通報告基準)の枠組みに基づき、米国はFATCAを通じて日本と金融口座情報を交換しています。米国内の日本人保有口座は日本の国税庁に情報が届く仕組みです。
日本居住者が5,000万円を超える国外財産を保有する場合、国外財産調書の提出義務が生じます。米国法人の持分・銀行口座・不動産がこの基準を超える場合は提出が必要です。また、海外金融機関への100万円超の送金・受領は金融機関経由で国税当局に報告されます。個別の税務判断は必ず税理士にご相談ください。
アジア各国との比較・設立相談を申し込む
当社(ADEG)は米国の設立代行は行っておらず、情報提供と相談受付のみです。米国法人の設立・維持・税務は複数の専門家(会社設立代行業者・米国公認会計士・移民弁護士)が連携して対応する領域です。香港・マレーシア・ラブアンとアメリカを並べて比較検討したい場合も相談をお受けしています。各国で認可を受けた現地事業者と連携してサポートします。お問い合わせはお電話(050-4560-1792、平日10:00〜19:00)またはフォームからどうぞ。
アジア各国との比較はアジア4拠点の比較記事を参照してください。香港・マレーシア・ラブアンとの違いを整理してから米国法人の位置付けを決めることで、設立の目的に最も合った拠点選択ができます。設立支援の詳細は海外法人設立の支援ページに掲載しています。
海外法人設立を検討しています。まず何から始めればよいですか?
まず無料相談(30分・Zoom)でご状況をお聞かせください。担当者が事業内容・目的・日本での税務状況をうかがい、設立候補国の選定と費用感についてご説明します。設立前に国際税務を専門とする税理士にもご相談されることをお勧めします。
どの国での設立が自分に向いていますか?
事業内容・取引先・日本での税務状況・ビザの必要性によって異なります。大まかには、香港は国際的な貿易・サービス業で活動実態が香港外にある事業、ラブアンは国際的な投資持株・金融サービスで実質要件を充足できる事業、マレーシアは現地市場参入や就労ビザが必要な事業に向いています。詳しくは対応国の比較ページをご覧ください。
日本語でサポートを受けられますか?
はい。担当者との相談・書類の説明・進捗報告はすべて日本語で行います。受付時間は平日10:00〜19:00(日本時間)です。
設立後のサポートもありますか?
はい。設立後の年次申告書・法定監査・会社秘書役サービス・役員変更などの手続きも対応しています。設立後のサポート内容・費用については料金ページまたは担当者にご確認ください。
出典
- IRS「外国人所有の無視される法人(Form 5472)」(確認日 2026-10-17)https://www.irs.gov/forms-pubs/about-form-5472
- Delaware Secretary of State「LLC 設立手数料」(確認日 2026-10-17)https://corp.delaware.gov/fee_schedule.shtml
- Wyoming Secretary of State「LLC 年次報告」(確認日 2026-10-17)https://sos.wyo.gov/Business/LLC.aspx
- USCIS「E-2 条約投資家ビザ」(確認日 2026-10-17)https://www.uscis.gov/working-in-the-united-states/temporary-workers/e-2-treaty-investors
- USCIS「L-1A ビザ」(確認日 2026-10-17)https://www.uscis.gov/working-in-the-united-states/temporary-workers/l-1a-intracompany-transferee-executive-or-manager
- 国税庁「外国子会社合算税制 Q&A」(確認日 2026-10-17)https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/180111/pdf/01.pdf
- 財務省「日米租税条約」(確認日 2026-10-17)https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/tax_convention/overview.htm
この記事は、公的機関が公開している情報をもとに、制度の一般的な内容を説明したものです。個別の税務の判断は税理士が行います。制度は改正されることがあるため、手続きの前に最新の情報をご確認ください。