シンガポールで会社設立する方法

最終更新 (日本時間) 執筆 KSKパートナーズ株式会社

シンガポールで会社設立する方法のイメージ写真

シンガポールは東南アジアの金融・ビジネスハブとして、多くの日本企業が進出拠点として選んでいます。英語が公用語であり、法制度は英国普通法(コモンロー)を基礎としています。シンガポール法人設立の費用・手続き・税制・ビザ要件を実務的な観点から整理します。なお当社(ADEG)はシンガポールの設立代行は行っていませんが、検討段階での情報提供と相談受付は可能です。香港・マレーシア・ラブアンとの比較検討にも対応しています。

設立の基本情報と費用

最も一般的な法人形態は私会社(Pte. Ltd.:Private Company Limited by Shares)です。会社会計規制機構(ACRA:Accounting and Corporate Regulatory Authority)が登記を管轄し、電子申請システム Bizfile+ で手続きが完結します。

項目 内容
会社形態 私会社(Pte. Ltd.)
名称予約料 SGD 15
登記料 SGD 300
年次申告料 SGD 60
居住取締役要件 1名以上(市民・永住権者・就労ビザ保有者)
最低資本金 法定最低額なし(SGD 1 が一般的)
会社秘書役 設立後6か月以内に選任が必要(シンガポール居住者)

名称予約(SGD 15)の承認後、60日以内に登記書類を提出します。登記料は SGD 300 です。設立後は年次申告書を ACRA に提出し、申告料は SGD 60 です。設立から6か月以内に会社秘書役の選任が義務付けられています。

設立手続きの流れ

名称予約と会社登記

Bizfile+ で社名の検索・予約申請を行います。申請には会社名・事業内容・設立書類(メモランダム・アンド・アーティクルズ・オブ・アソシエーション:M&AA)・取締役と株主の個人情報・登録住所が必要です。名称は既存の商号と類似していないことが条件で、ACRA が承認するまで最短1日程度かかります。登記完了後、デジタル証明書が発行されます。

登記後の法定手続き

設立後は税務・会計・雇用に関する各種届出が必要です。内国歳入庁(IRAS:Inland Revenue Authority of Singapore)への税務登録、GST課税登録(年間課税売上がSGD100万を超えるか超える見込みの場合)、そして従業員を雇用する場合は中央積立基金(CPF)への雇用者登録が必要になります。会計帳簿は最低5年間の保存が法定要件です。

税制(法人税とGST)

シンガポールの法人税率は課税所得に対して一律17%です。新設法人には設立後最初の3課税年度(Year of Assessment)に新規設立法人向け免除(Start-Up Tax Exemption)が適用されます。対象となる課税所得 SGD 10万のうち75%が免除され、次の SGD 10万のうち50%が免除されます。ただしこの免除は持株会社・不動産投資会社には適用されません。

GST(物品サービス税)は2024年1月1日以降、標準税率9%で運用されています。国内でのサービス提供や商品販売が対象です。一方、輸出サービスや国際輸送は原則0%税率(ゼロ税率)が適用されます。課税登録義務は事業者の課税売上が12ヶ月で SGD 100万を超えた場合または超える見込みの場合に発生します。GST課税業者として登録後は、原則として四半期ごとに申告・納付が求められます。

居住取締役要件とEmployment Pass

シンガポール会社法により、取締役のうち少なくとも1名がシンガポール居住者(市民、永住権者、または就労ビザ・起業家ビザ保有者)である必要があります。この要件を満たせない日本人経営者は、名義取締役(Nominee Director)サービスの利用が一般的です。名義取締役サービスを利用する場合は、サービス提供者との契約内容・費用を事前に十分確認してください。

就労目的でシンガポールに滞在するには Employment Pass(EP)の取得が必要です。EPの最低月給基準は2025年以降 SGD 5,600 であり、加えてCOMPASSフレームワークによるスコア審査が行われます。COMPASSでは学歴・職種・企業の多様性・現地支援活動などが採点されます。EPはシンガポール人材省(MOM)が審査し、申請から結果まで通常数週間から数ヶ月かかります。

銀行口座開設の流れ

シンガポールの銀行(DBS・OCBC・UOBなど)や外資系銀行での法人口座開設が選択肢となります。審査では、会社の設立書類・ビジネスプラン・取引先の情報・実質的支配者(UBO)の証明書類が求められます。非居住者の場合は対面面談を求める銀行もあります。口座開設の可否は各行の審査基準によって異なります。申請前に事業内容の英語説明資料を準備しておくと、審査がスムーズに進む場合があります。また、取引先や資金源を具体的に説明できるよう整理しておくと、審査担当者への説明が円滑になります。

日本の税制との関係

日本居住者がシンガポールに法人を設立する場合、日本の外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)の確認が必要です。この制度では、外国法人の実効税率が20%未満の場合、その所得が日本の株主の所得に合算されて課税される可能性があります。

シンガポールの法人税率は17%ですが、スタートアップ免除適用後の実効税率によっては20%の基準を下回ることがあります。経済活動基準(事業基準・実体基準・管理支配基準・所在地国基準)をすべて満たす場合は合算課税から除外されますが、要件の充足は具体的な事業内容と実態に依存します。

日本とシンガポールの間には租税条約があり、配当・利子・使用料の源泉徴収税率について定めが設けられています。具体的な税率は財務省の公式資料でご確認いただくか、税理士にお問い合わせください。また、CRS(共通報告基準)に基づき、シンガポールは2018年9月から日本を含む各国と金融口座情報を自動交換しています。日本居住者が5,000万円を超える国外財産を持つ場合は国外財産調書の提出義務も生じます。個別の税務判断は必ず税理士にご相談ください。

年次申告と会計の義務

シンガポールの法人は毎年、株主総会(AGM)の開催と年次報告書(Annual Return)の ACRA への提出が義務付けられています。AGMは決算日から6ヶ月以内、年次報告書の提出はAGM後30日以内が原則です(プライベートカンパニーは要件が異なります)。会計帳簿はシンガポール財務報告基準(SFRS)に準拠して作成し、法人税申告書(税務申告書)は課税年度終了後に IRAS へ提出します。

監査については、年間売上SGD10百万以下・従業員50名以下・資産SGD10百万以下のうち2つ以上を満たす小規模会社は免除対象となります。免除に該当しない法人は認定監査法人による法定監査が必要です。帳簿・書類は最低5年間の保存が義務付けられています。

ビジネス環境と注意点

シンガポールは腐敗防止指数や法の支配指数でアジア上位に位置し、知的財産保護・契約執行・紛争解決の仕組みが整っています。英語による法的書類・行政手続きが可能なため、日本企業の事務コストは他のアジア拠点と比べて低い傾向があります。また、二重国籍禁止ルールがなく優秀な外国人材が集まりやすい環境も整っています。一方、人件費・オフィス賃料・生活費は香港と並びアジアでも高水準で、法人の維持コストを試算する際には注意が必要です。

外国企業が現地に実体のある事業活動を行わず、節税目的だけで法人を置く場合には、シンガポール税務当局(IRAS)から経済実質の確認を求められることがあります。特に持株会社や受動的収入中心の会社については、事業活動の実態と取締役会の意思決定がシンガポールで行われているかどうかが重視されます。進出にあたっては現地の税理士・弁護士との事前協議を強くお勧めします。

シンガポール法人の情報収集・比較相談を申し込む

当社(ADEG)はシンガポールの設立代行は行っておらず、情報提供と相談受付のみです。香港・マレーシア・ラブアンの設立代行を承っており、シンガポールを含む複数拠点の比較検討もお手伝いします。進出先の選定から現地の手続きまで、各国で認可を受けた現地事業者と連携してサポートします。ご質問はお電話(050-4560-1792、平日10:00〜19:00)またはお問い合わせフォームからご連絡ください。当社の費用概要は料金ページに掲載しており、香港・マレーシア・ラブアンの設立手続きの詳細は各国ページをご確認ください。

アジア拠点の比較はアジア4拠点の比較記事を参照すると視野が広がります。当社が対応する設立支援の詳細は海外法人設立の支援ページに掲載しています。

海外法人設立を検討しています。まず何から始めればよいですか?

まず無料相談(30分・Zoom)でご状況をお聞かせください。担当者が事業内容・目的・日本での税務状況をうかがい、設立候補国の選定と費用感についてご説明します。設立前に国際税務を専門とする税理士にもご相談されることをお勧めします。

どの国での設立が自分に向いていますか?

事業内容・取引先・日本での税務状況・ビザの必要性によって異なります。大まかには、香港は国際的な貿易・サービス業で活動実態が香港外にある事業、ラブアンは国際的な投資持株・金融サービスで実質要件を充足できる事業、マレーシアは現地市場参入や就労ビザが必要な事業に向いています。詳しくは対応国の比較ページをご覧ください。

日本語でサポートを受けられますか?

はい。担当者との相談・書類の説明・進捗報告はすべて日本語で行います。受付時間は平日10:00〜19:00(日本時間)です。

設立後のサポートもありますか?

はい。設立後の年次申告書・法定監査・会社秘書役サービス・役員変更などの手続きも対応しています。設立後のサポート内容・費用については料金ページまたは担当者にご確認ください。

出典

  • ACRA「会社設立ガイド」(確認日 2026-10-17)https://www.acra.gov.sg/incorporation/incorporating-a-company/
  • IRAS「法人税率・新設法人向け免除」(確認日 2026-10-17)https://www.iras.gov.sg/taxes/corporate-income-tax/basics-of-corporate-income-tax/corporate-income-tax-rate-rebates-and-tax-exemption-schemes
  • IRAS「GST 税率と登録」(確認日 2026-10-17)https://www.iras.gov.sg/taxes/goods-services-tax-(gst)/gst-guide-for-businesses/basics-of-gst/gst-tax-rate
  • MOM「Employment Pass 資格」(確認日 2026-10-17)https://www.mom.gov.sg/passes-and-permits/employment-pass/eligibility
  • 国税庁「外国子会社合算税制 Q&A」(確認日 2026-10-17)https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/180111/pdf/01.pdf
  • 財務省「租税条約等の一覧(シンガポール)」(確認日 2026-10-17)https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/tax_convention/overview.htm

この記事は、公的機関が公開している情報をもとに、制度の一般的な内容を説明したものです。個別の税務の判断は税理士が行います。制度は改正されることがあるため、手続きの前に最新の情報をご確認ください。

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