香港とマレーシアの法人設立を比較

最終更新 (日本時間) 執筆 KSKパートナーズ株式会社

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香港とマレーシアはどちらもアジアを代表するビジネス拠点です。両地域は設立要件・税制・ビザ制度の点で大きく異なっており、事業の種類と在留意向に応じて適切な選択肢が変わります。費用・税率・居住取締役要件・ビザ・銀行口座の5つの視点で両地域の制度の差異を整理します。当社(ADEG)は香港・マレーシアどちらも設立代行を行っており、各国で認可を受けた現地事業者と連携してサポートします。

設立コストと手続きの比較

項目 香港 マレーシア
主な会社形態 株式有限責任私会社 Sendirian Berhad(Sdn. Bhd.)
設立登記料 HK$1,545(電子申請) RM1,000(SSM)
年次報告料 HK$105(期限内) RM150
居住取締役の要件 不要(非居住者可) 必須(1名以上)
会社秘書役の要件 香港居住の自然人または登録法人 設立から30日以内に選任
主な法人税率 8.25%(HK$200万以下)/ 16.5% 24%(SME優遇あり)

香港の設立登記料HK$1,545は電子申請(e-Registry)の場合の金額です。紙申請の場合はHK$1,720です。事業登録証明書(Business Registration Certificate)の年間費用はHK$2,200(1年証明書)です。マレーシアは会社登録委員会(SSM)への登記費用RM1,000が主な公的手数料となります。年次報告(Annual Return)はRM150です。

税制の違い

香港の利得税

香港は源泉地主義(Territorial Source Principle)を採用しており、香港外で締結・履行された取引の利益には利得税(Profits Tax)が課されません。2018/19年度以降、課税所得HK$200万以下に8.25%、超過部分に16.5%の2段階税率が適用されます。関連企業グループ内では1社のみが低税率を選択できます。また、2023年1月1日以降は多国籍企業グループに対する外国源泉所得免税制度(FSIE)が施行されており、受動的収入には経済実質の要件が課されます。

香港と日本の間には日本・香港租税協定が2011年8月14日に発効しており、配当・利子・使用料の源泉徴収税率について定めが設けられています。具体的な税率は財務省の公式資料でご確認いただくか、税理士にお問い合わせください。

マレーシアの法人税

マレーシアの標準法人税率は24%です。中小企業(SME)の優遇として、課税所得RM15万以下の部分に15%、RM15万超〜RM60万の部分に17%が適用されます。また2024年3月1日以降、サービス税率は8%(特定4業種は6%)です。会計年度2023年以降は外国源泉所得が送金ベースで課税される制度が適用されています。

日本とマレーシアの租税条約は1999年12月31日に発効しています。同条約はラブアンの優遇税制には適用されない点に注意が必要です。マレーシアとの取引での条約適用については税理士に確認してください。

居住取締役と実体要件

香港では取締役に国籍・居住地の要件がなく、日本在住の方だけで設立・維持できます。自然人取締役が1名以上必要で、法人のみによる取締役構成は認められません。会社秘書役(Company Secretary)は香港在住の自然人または香港で登録された法人に限られます。株主情報は会社登記局の公開記録に掲載されますが、重要管理者登記制度(SCR)では実質的支配者(持分25%以上の者等)の登録が義務付けられています。登録を怠った場合の罰則はHK$25,000です。

マレーシアでは少なくとも1名のマレーシア常駐取締役(シティズンまたは永住者、もしくは就労許可保有者)が必要です。外国人が自身で常駐取締役になるにはエンプロイメントパス(Employment Pass)の取得が前提となります。名義取締役(Nominee Director)サービスを利用する方法もありますが、事業の実質的な管理はオーナーが担う仕組みを設計する必要があります。また会社秘書役は設立から30日以内に選任しなければなりません。

法定記帳と年次申告の義務

香港では会社法(Companies Ordinance Cap.622)により会計帳簿の7年間保存が義務付けられています。年次報告書(Annual Return)は設立記念日から42日以内に提出し、期限内の提出料はHK$105です。42日超〜3ヶ月以内はHK$870、3ヶ月超〜6ヶ月以内はHK$1,740、6ヶ月超〜9ヶ月以内はHK$2,610、9ヶ月超はHK$3,480の延滞料となります。初回の利得税申告は設立から18ヶ月以内が一般的な目安です。

マレーシアでは会社委員会(SSM)への年次申告(Annual Return)の提出とマレーシア会計基準(MFRS)に準拠した決算書の作成が必要です。監査については2024年の会計基準指針(PD10/2024)により、売上高RM300万以下・資産RM300万以下・従業員30名以下のうち2条件を満たす場合は監査免除が認められます。

銀行口座の開設審査

香港では香港金融管理局(HKMA)がリスクベースのデューデリジェンスを銀行に義務付けており、設立証書・事業計画・実質的支配者情報の提出が求められます。口座開設の可否は各行が判断します。マレーシアの主要銀行も同様にAML/CFT規則に基づく審査を行い、非居住者の場合は対面手続きを要求するケースがあります。審査通過のためには事業の具体的な取引相手・資金源・契約書などの準備が有効です。

ビザと滞在

香港では起業家ビザ(General Employment Policy の起業家枠)が利用できます。事業計画・財務予測・現地雇用創出を審査し、初回36ヶ月の滞在許可が付与されます。書類完備からの標準処理期間は4週間です。入境事務処理局(Immigration Department)の承認は裁量的で、結果の保証はできません。同伴家族の帯同ビザは申請から通常6週間で処理されます。

マレーシアではエンプロイメントパス(EP)の申請にあたって、2026年6月1日以降に改訂された給与基準が適用されます。カテゴリーIIIは月額RM5,000以上(一般職)またはRM7,000以上(製造業)、カテゴリーIIは月額RM10,000以上、カテゴリーIは月額RM20,000以上です。MIDA(マレーシア投資開発庁)への投資があればKey Postとして申請できます。100%外資の場合のMIDA申請資本要件はRM500,000です。ビザに関する詳細はマレーシア就労ビザ解説をご参照ください。

日本の税制との関係

日本居住者が香港またはマレーシアに法人を設立する場合、外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)の確認が必要です。外国子会社の実効税率が20%未満の場合は、その所得が日本の株主に合算されます。香港の利得税率(8.25%〜16.5%)は20%を下回る可能性があり、マレーシアの標準税率(24%)は通常20%以上ですが、SME優遇や特定免除の適用後は注意が必要です。

CRS(共通報告基準)に基づき、香港は2017年から、マレーシアは2018年から日本を含む各国と金融口座情報を自動交換しています。海外口座の情報は日本の国税庁に届いています。日本居住者で5,000万円超の国外財産を保有する場合は国外財産調書の提出義務も生じます。海外への送金が1回100万円を超える場合は金融機関から国税庁への報告が行われます。事業の実態・資金の流れ・在留状況を踏まえた総合的な税務プランニングには、必ず税理士にご相談ください。

どちらを選ぶか

日本在住のまま法人を維持したい方や、設立・維持コストを抑えたい方には香港が選択肢に入ります。東南アジアに実際に移住・駐在し、現地市場の開拓や製造拠点を設けたい方にはマレーシアが向いています。また、ラブアン法人と組み合わせてマレーシアの拠点とラブアンの優遇税率を併用する設計も検討されることがあります。

税制の有利不利は事業の実態・在留期間・日本の税務ポジションによって大きく変わります。設立前に事業計画と税務戦略を専門家と整合させてください。当社(ADEG)は香港・マレーシアいずれの設立もサポートしており、各国で認可を受けた現地事業者と連携して手続きを進めます。サービス内容は海外法人設立の支援ページをご覧ください。設立後の会計・年次申告については会計・年次申告の代行ページに詳細を掲載しています。

他の地域との詳細比較はラブアンと香港の比較・アジア拠点の選択比較もあわせてご参照ください。設立先の絞り込みに迷われる場合は、まずどこの国に設立すべきかの記事もお読みください。

香港法人の利得税率はいくらですか?

香港の利得税率は、課税対象利益が初めてのHK$200万以下の部分に8.25%、超える部分に16.5%が適用されます(2018/19課税年度以降)。ただし香港の利得税は源泉地主義を採用しており、香港を源泉としない利益は課税対象外となる場合があります。個別の判断は税理士にご相談ください。

香港法人に必要な取締役の要件は何ですか?

香港の株式有限私会社には、最低1名の取締役(自然人)が必要です。国籍・居住地の制限はなく、日本居住者でも取締役になれます。また、会社秘書役(Company Secretary)の任命が義務で、唯一の取締役が秘書役を兼務することは禁止されています。

香港の年次報告書(Annual Return)の提出期限はいつですか?

私会社の場合、設立記念日から42日以内に会社登記局へ年次報告書を提出する必要があります。期限内(42日以内)の提出手数料はHK$105で、9ヶ月以上遅延した場合はHK$3,480の延滞手数料が発生します。

香港の会社秘書役は何をする人ですか?

会社秘書役(Company Secretary)は、会社登記局への申告書類の準備・提出、取締役会・株主総会の議事録管理、法定登録簿の維持管理などの法定業務を担う役職です。香港の全私会社に1名が必要で、香港に通常居住する自然人または香港に事業所を持つ法人が任命できます。

出典

  • 会社登記局(Companies Registry)「手数料」(確認日 2026-10-17)https://www.cr.gov.hk/en/services/fees.htm
  • 香港内国歳入局(IRD)「利得税 2段階税率」(確認日 2026-10-17)https://www.ird.gov.hk/eng/faq/2tr.htm
  • 香港内国歳入局(IRD)「外国源泉所得免税制度(FSIE)」(確認日 2026-10-17)https://www.ird.gov.hk/eng/paf/fsie.htm
  • マレーシア会社委員会(SSM)「登記費用」(確認日 2026-10-17)https://www.ssm.com.my/
  • マレーシア内国歳入局(LHDN)「法人税率」(確認日 2026-10-17)https://www.hasil.gov.my/
  • マレーシア人材省(JTK)「Employment Pass」(確認日 2026-10-17)https://esd.imi.gov.my/
  • 国税庁「外国子会社合算税制 Q&A」(確認日 2026-10-17)https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/180111/pdf/01.pdf

この記事は、公的機関が公開している情報をもとに、制度の一般的な内容を説明したものです。個別の税務の判断は税理士が行います。制度は改正されることがあるため、手続きの前に最新の情報をご確認ください。

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